2017年第1回定例会 討論

2017年第1回定例会 討論

2017年3月30日

小松 久子

 

都議会生活者ネットワークを代表して、第25号議案に反対、その他の知事提出のすべての議案に賛成の立場から討論を行います。

  • 1号議案「東京都一般会計予算」について

小池知事が初めて編成した予算案には、子どもへの教育予算の増額、女性の再就職や起業への支援などが盛り込まれました。

生活者ネットワークは、「人への投資」こそが重要と考えます。社会の格差を是正し、若者、女性が働き続けることのできる環境整備や子どもの貧困対策に向けた福祉や教育の充実、働き方の見直しにしっかり取り組んでいくことを要望します。

 

  • 特定異性接客営業等の規則に関する条例案について

今定例会で、「特定異性接客営業等の規則に関する条例案」いわゆるJKビジネスに関する条例案が提出されました。女子高生に接客サービスをさせるJKビジネスが犯罪の温床となっている現状を受けて、都は有識者懇談会を設置し、実際にJKビジネスで働いていた女子高校生等の意識調査などを報告していますが、少女たちを支援している団体は、表面的な調査では実態は把握できないと指摘しています。少女たちは、人への不信感や抱える問題の深さからなかなか思いを語らず、窮状を訴えられないと言います。少女たちの現実は、貧困や虐待、いじめなどで家庭にも学校にもいられない、どこにも居場所がなく、お金がないために、まちにさまよう「難民」状態にあり、そこにJKビジネスが言葉巧みに漬け込んでくると聴きました。

事業者に対する規制強化だけでは、こうした少女たちを守る根本的な対策にはなりません。安心して相談できる窓口の充実、一時的なシェルターの提供など、福祉的な視点を持つ専門家や、支援団体等との連携で寄り添う支援が重要です。

 

  • 公文書管理について

豊洲市場移転問題については、盛り土問題の発覚当初から、公文書の不存在などを問題視してきましたが、百条委員会によって、都の隠ぺい体質に加え無責任体質が明らかになりました。石原元知事のもとで都庁官僚制が制度疲労を起こし、機能不全に陥った結果がこの問題に集約されたのだと考えます。東京都は財政が潤沢であるがゆえに、職員組織のネジがゆるんでしまいました。市民の信頼を回復するには、チェック機能が働くよう、市民に開かれた情報公開のしくみを構築することが重要です。

知事は、公文書開示の手数料を減額し、第2回定例会に公文書管理条例を提案するとしています。政策意思の形成過程から文書の作成を義務づけ、資料文書も一体的に管理、保存期間は一番長いものに合わせて、説明責任を全うする必要があります。条例提案までに実施予定のパブリックコメントも踏まえて、廃棄のルールをさらに開かれたものにするなど、公文書が都民の財産であることを実際の管理でも具現化するよう求めます。

また公文書館についても、国分寺市への移設を機に、「公の施設」として条例に位置づけ、機能強化することを要望します。

 

  • 次に、エネルギーの地産地消についてです

温暖化対策は喫緊の課題であり、再生可能エネルギーの利用をもっと増やし、東京でもエネルギーの地産地消を推進する必要があります。新年度のモデル事業が、島しょ地域のエネルギー自給率の向上に寄与することを期待しますが、行政や民間事業者、そして市民が再エネをつくり出し、省エネもあわせて原発にたよらないエネルギーシフトをめざすことが重要です。積極的な取り組みを求めます。

 

  • やさしい日本語について

生活者ネットワークは、災害などの緊急時に情報弱者になりがちな外国人や障がい者、子どもなどが、すばやく情報を得られるよう「やさしい日本語」での発信を提案してきましたが、先日、東京都のHPのforeign language外国語のサイトにやさしい日本語コーナーが加わりました。よりわかりやすくなるよう、さらなる研究と工夫を期待します。オリンピック・パラリンピックを控える東京は、緊急時に留まらず平時から、音声とともに、看板等の表示やSNSやデジタルサイネージなどの視覚においても、率先して、やさしい日本語による情報提供に取り組むことを求めます。

 

  • 子どもに安全な製品づくりについて

昨年末、子どもに安全な製品づくりをするための国際的な指針「ISO/IECガイド50」が、日本国内基準JISにも採用されました。この指針には、「子どもは小さな大人ではない」「子どもの傷害防止は社会全体が共有すべき責任である」と明記されています。都は、これまでも東京都商品等安全対策協議会で、使い捨てライター、抱っこひも、歯ブラシなどについて取り上げ、国や事業者に働きかけて、子どもに安全な製品づくりを実現してきました。

知事は、こうした子どもの事故防止に関するさまざまな情報を、今後、保護者がより活用しやすいよう取りまとめ、パンフレットだけでなく、ホームページやSNSでも発信するなど、生活者目線に立った効果的な情報提供に取り組んでいくと答弁されました。これが広く周知され、店頭販売だけでなく、ネット販売などで、商品を選ぶ際に活用されるよう情報発信の工夫を求めます。

 

  • 高齢者福祉について

暮らしの場での看取り支援の事業が、東京都でもようやく始まりました。最期のときまで自分らしく暮らし続けるには、在宅療養に関するしくみについて理解するとともに、日頃から人生の最期について考え、家族と話し合っておくことが必要です。

高齢になっても障がいがあっても地域でいきいきと暮らすためには、地域に多様な人が交流できるようなしかけも望まれます。特別養護老人ホームと保育園の併設が都内でも始まっており、多世代交流の拠点として地域に開かれた場づくりが進められています。ソーシャルミックスのまちづくりを導く、こうした新しい取り組みを、都としても支援していただきたいと思います。

 

  • 障がい者の就労について申しあげます。

生活者ネットワークは、インクルーシブな社会の実現に向けて、障がい者をはじめ就労が困難な人たちを30%以上含む、社会的目的を持った非営利の企業「社会的事業所」の創設を、かねてから提案しています。東京都がソーシャルファームづくりに向け動き始めたところですが、今後このようなソーシャルファームが実現することを期待するものです。

障がい者就労は、農業分野でも注目されており、厚生労働省と農林水産省の連携による「農福連携」の取り組みが実施されています。東京の市街化区域内農地は、これまでの制度では実施が困難と言われていましたが、「東京の将来に向けた農地活用事業」をきっかけに、障がい者が農作業に従事でき、さらには、仕事として農福連携事業が展開できることを期待しています。

 

最後に、豊洲市場移転問題についてひと言申し上げます。

都が施設整備にすでに多大な費用を投じてきた豊洲市場については、開場した場合のランニングコストがさらに高額になります。そもそも都議会に豊洲市場移転問題特別委員会、また百条委員会が全会一致で設置されたのは、この移転に問題があると議会が認めたからでした。しかし、地下水モニタリング調査の結果は土壌汚染が解消されていないことを証明し、百条委員会では都政の闇が明らかになっただけで、豊洲移転が抱える問題は何ら解決していません。未だ豊洲が「安全・安心」とする結論をもつことはできず、知事には、市場の今後について、豊洲移転だけでなく、築地再整備案も入れ、コスト情報も含めた代替案を複数提示し、情報を都民に提供することを求め、都議会生活者ネットワークの討論とします。