◆ 規制だけではなく、子どもの育つ力の育成を!

大西由紀子

 子どもを取りまく社会環境の悪化や、子どもが犯罪に巻き込まれる事件が多発するなどの状況に、誰もが不安を感じています。
今回、健全育成や非行防止の目的で条例改正が提案されました。
改正案の主な内容は、不健全図書の包装義務、着用済み下着の買い受け禁止、風俗店への勧誘行為禁止などで事業者への規制を行うと同時に、子どもがカラオケボックスやまんが喫茶などへ深夜に立ち入ることを制限し、深夜午後11時から午前4時まで子どもを外出させない努力義務を保護者に課し、警察官の立ち入り調査権を付与することなどです。
女性や子どもの人権の視点から、事業者に対して規制をかけることには、一定の理解はできます。しかし、規制強化による治安対策だけで「健全育成」を行うのでは抜本的な解決には至りません。育成の主体であり、被害者になり得る子ども自身に、メディアリテラシー(情報を主体的に読み解きコミュニケーションを図る能力)や自己決定能力を育てる教育こそが「健全育成」であり、同時に、子どもの権利擁護や救済のしくみが不可欠です。
今の東京都は規制強化を優先し、条例改正も表面は事業者への規制であっても、結局は子ども自身の規制につながるものです。子ども自身が自分を守るための教育や学習の場などの必要性について理解を示さない点に、大きな問題があります。