2012年都議会第2回定例会「一般質問」

2012年都議会第2回定例会「一般質問」

2012年6月13日

山内 玲子

1、都民投票条例について

 「原発の是非を問う都民投票条例」の制定をもとめて、東京都に直接請求が行われた。昨年の福島原発事故以来、子どもへの被曝や市民生活に対する不安から、多くの市民が行動を起こさずにはいられなかったことを重く受け止めなくてはならない。

 思えば、チェルノブイリ原発事故による食品の放射能汚染を契機に危機感が高まり、23年前の1989年、55万筆の署名を持って、東京都に「食品安全条例の制定を求める直接請求」が出されて以来の都民の政治行動である。知事が言うような単なるセンチメントではなく、自分達の権利や暮らしを守りたい、これからの将来に自ら責任を持ちたいと考える都民が32万人もいたということである。

 地方分権一括法が施行され、地方自治体の自己決定権、自立性を高めていくことが今、求められている。選挙で選ばれた議員と言えども全てを白紙委任されたわけではない。住民の生活や将来を左右する重大な課題については民意の反映を保障する実質的な制度が必要である。

Q1: 知事は、「直接民主制が、間接民主制を補完する重要な手段であることは論を俟たないが・・・」と言っているが、住民投票制度についてどのようにお考えか所見を伺う。

A1:(知事)

 住民投票制度については、あらためて申しあげるまでもなく、住民投票という直接民主制が、間接民主制を補完する重要な手段であることは、論を俟たない。

 しかし、今回、条例案が提出されている原発稼働の是非に関しは、一自治体の住民投票になじむものではない。

 エネルギー問題は、国家発展の要であるが、国は未だにエネルギー戦略の明確な方向性を見いだせていない。高度に発展した社会を支える国の経済を発展させるため、いかなるエネルギーをどれだけ確保するのか政治が責任を持って決断し、早急に基本戦略を策定すべき。

 その上で、原発稼働の是非は、国が、安全性はもちろん、経済性、産業政策などと複合的に考慮し、専門的な知見も踏まえ、理性的かつ冷静に判断するべき。

 住民投票という手法で、ただ観念的に原発の是非だけを問い、その結果が、錦の御旗の如く力を持つならば、国をかたむけ、滅ぼす危険になりかねない。

 ゆえに、都民投票の条例案には反対である。

2、エネルギー対策について

 国は、福島原発事故についてきちんとした検証も反省もせず、大飯原発を再稼動しようとしているが、原発に依存しないエネルギー政策を打ち出すべきである。

 今年夏の電力需給は、東京電力管内の予備率が、猛暑の場合でもプラス4.5%と試算されている。これは節電の定着が前提であることから、都民・事業者がしっかりと省エネに取り組む必要がある。

Q2: 都では、「賢い節電」について示しているが、具体的にどうしたらよいか悩む人たちも多いと思われる。一方、優れた節電・省エネ対策を実施している事例もある。都がその事例を収集し広く周知することで、節電がより一層進むと考えるが、所見を伺う。

A2:(環境局長)

 都はこれまで、事業者のキャップ・アンド・トレードや家庭の省エネ診断員制度などの地球温暖化対策を進めてきた。

 この経験を活かし、昨年夏においても、多くの都民・事業者が、比較的無理なく節電に取り組むことができた。

 今後とも都は、事業者の優れた事例や家庭向けの具体的で分かりやすい対策について、ホームページで公開するとともに、省エネセミナーや節電アドバイザーなど様々な機会を通じて、広く都民・事業者に周知し、無理なく長続きできる節電対策を促していく。

 家庭における賢い節電を定着させるためには、我慢ではなく、電力使用量の「見える化」を図り、使用量データを活用した取り組みが有効である。

 東京電力は、今後5年以内に総需要の8割にスマートメーターを導入する方針を出したが、せっかく導入しても個々のユーザーがそのデータを活用できなければ、意味がない。また、最近では、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)の導入も始まっている。

Q3: 都として、ユーザーが電力使用データを十分に活用し、節電効果が電力料金に反映されるよう、国や東京電力に求めるとともに、スマートメーターやHEMSを活用した省エネ・節電の推進についても、今後、普及拡大をめざしていくことが必要と考えるが、見解を伺う。

A3:(環境局長)

 スマートメーターは、時間帯別の電力使用状況をリアルタイムで把握できる電子式メーターであり、多様な型料金制度と併せて導入することで、合理的な節電を促す有効な手段となる。

 都は、これまで、国や東京電力に対し、スマートメーターの導入促進と柔軟な料金メニューの設定を繰り返し求めてきている。

 また、現在行われているHEMSとの情報連携に向けた規格化の動きを見据えながら、電力使用量の見える化に加え、需給ひっ迫時における自動制御等、家庭における快適性と利便性の両立を図るツールとしての活用を促していく。

 来月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートする。10キロワット以上の太陽光発電については、全量買い取りとなっており、今後、ビルやマンションなど一定規模の建物で、導入の加速が見込まれる。また、市民のお金を集めて市民共同発電所をつくろうという動きも顕著になっている。

Q4: 都は、これまで補助事業を実施してきたが、この機会を捉えて、さまざまな建物で、太陽光発電の市場を一層拡大できると考えるが、所見を伺う。

A4:(環境局長)

 これまで余剰電力の買取制度が適用されてきた太陽光発電については、今後、10kW以上という条件付きではあるが、全量買取が適用されるようになるため、従来の業態を超えて新たに発電事業に参入する事業者の動きが活発化している。

 太陽光発電の導入方式としても、建物の所有者が自ら設備を設置する従来の方式に加え、建物の屋根貸し事業など新たなビジネスモデルが広がることも考えられる。

 都は、新たなビジネスモデルも含め様々な形で太陽光発電の市場が拡大できるよう、事業者のニーズも踏まえながら、今後の普及策に繋げていく。

3、緑施策について

 都は、先月、「緑施策の新展開~生物多様性の保全に向けた基本戦略」を発表した。都はこれまでも、既存の緑を保全する地域指定や、自然保護条例に基づく開発許可制度と緑化計画書制度を通じて緑の確保や創出を図り、効果が見られたところもあるが、緑の減少を食い止めることはできていない。例えば、市街地で4万平方メートル開発される場合でも、そこがグラウンドだったため、「自然地」が含まれないということで許可制度の対象とはならず、そこに戸建て住宅が建つことで、緑化計画書制度の対象にもならない。

 「緑施策の新展開」には「開発行為が生態系に与える影響を緩和する新たな仕組み」が将来的な方向性として示されており、制度の見直しや緑の確保と創出が進むものと期待している。

Q5: 都は、開発許可制度と緑化計画書制度のこれまでの成果をどのように捉え、生物多様性に配慮した緑の質と量を確保するために、今後どのように施策を進めていくのか伺う。

A5:(環境局長)

 都は、条例に基づく開発許可制度や緑化計画書制度を通じ、緑の確保と創出を推進し、さらに、確保すべき緑地面積の割合の引き上げ、既存樹木の保全検討の義務付けるなど、随時、制度強化を図ってきた。

 「緑施策の新展開」では、生物多様性に配慮した質の高い緑化を開発事業者に促す取り組みなど、新たな緑施策の方向性を示しており、今後、緑の保全や創出をさらに推進していく。

 なお、開発許可制度については、対象地に一定規模の自然地が含まれている場合には、グラウンドであっても制度の対象としている。緑化計画書制度についても、区市の同様の制度との役割分担の下、小規模な宅地造成にも適切に対応している。

4、若者支援について

 今年3月、内閣府は「若者雇用を取り巻く現状と問題」で、「高卒の3人に2人、大卒の2人に1人が教育から雇用へと円滑に接続できていない」と発表し、大きな衝撃をあたえた。5月の総務省発表の労働力調査でも、若者の完全失業率は各年齢の中で群を抜いている。これまで、若者の雇用の問題は、若者の意識の問題として論じられ、若者に責任が押し付けられてきた。

 しかし、就業の入り口でつまずき、経験やスキルのないまま年齢を重ね、ますます就労が難しくなるという悪循環を断ち切るためには、早期離職の内実を探り、そこを支援しなくてはならない。若者の早期離職は、当事者である若者にとってダメージであるばかりか、非常に大きな社会的コストになる。

Q6: こうした社会状況を踏まえて、現在の若者の雇用状況に対する東京都の見解をうかがう。

A6:(産業労働局長)

 若者を取り巻く雇用環境は、失業率が高い水準にあることやフリーターなど不安定な就業を余儀なくされている若者の増加など、厳しい状況にあると認識している。

 こうした状態を放置したままでは、若者自身の職業的自立や、キャリア形成に支障が生じるだけでなく、社会にとっても大きな損失につながる。

 都は、緊急就職支援事業により、非正規の若者の正規雇用化や職場への定着をサポートするとともに、職業訓練の拡充や就業支援の強化など切れ目のない様々な雇用対策を実施し、意欲ある若者の安定的な就業の実現を後押ししている。

 2010年に視察をしたイギリスでは、若者の失業は、単に職を失うだけでなく将来にわたり大きな困難をもたらすとして、大規模な財政を投じコネクションズ・サービスを立ち上げ、若者のための一体化した支援で実績を上げている。

 日本においては、2009年7月に「子ども・若者育成支援推進法」を制定し、自治体は全庁横断的な支援体制をつくることになっている。

 これまで、私たちは、困難を抱えている子ども・若者に対し、学校を卒業してから仕事に定着するまで、社会的にサポートしていくべきと要望してきた。

Q7: それには、孤立している若者たちが気軽に相談できる機関、居場所、多様な社会参加の場の提供等が欠かせないと考えるが、都の見解と取組みについて、伺う。

A7:(青少年・治安対策本部長)

 社会生活を円滑に営むことが困難な若者の支援にあたっては、関係機関が連携して対応することが重要である。

 そこで都では、若者が電話やメール、面接により、人間関係の悩みや孤独などを気軽に相談できる総合相談窓口「若ナビ」を運営し、相談内容に応じて就労、精神保健等の専門機関への紹介を行っている。

 また、ひきこもりの若者については、訪問相談、フリースペース、社会体験活動からなる都のプログラムに沿って支援を行うNPO法人等を登録、サポートする事業を実施し、参加団体では、若者の自宅への訪問や居場所の運営、ボランティア活動への参加などを行っている。

 都はこれらの団体や関係機関と連携しながら、若者が社会参加に向けた一歩を踏み出せるよう支援していく。

 都では、多摩地域の人材育成支援の拠点として、2011年4月に「多摩職業能力開発センター」を開設し、1年が経過した。平均年齢が20代のコースでは就職率も高く、企業側も大いに期待していると聞いている。仕事とのミスマッチを防ぎ、就職したい職業に必要な知識・技能を身につける機関として、効果的な支援の一つであり、質、量ともに充実することが必要である。

Q8: そこで、「多摩職業能力開発センター」において、若者の能力開発にどのように取り組んでいるのか、伺う。

A8:(産業労働局長)

 昨年4月に、施設や訓練規模を拡充して開設した、同センターでは、多摩地域の産業特性を踏まえ、エアコンなど電化製品の動作を制御する技能を学ぶ「計測制御システム科」など、4科目、年間120名の定員で、若者を対象とした実践的な職業訓練を実施している。

 このほか、高校中退者等を対象に、「若年者就業支援科溶接コース」を年間30名の定員で実施し、コミュニケーション能力やビジネスマナーなど、社会人としての基礎能力を重視した訓練も行っている。

 こうした取組を通じて、多摩地域の若者の能力開発を支援している。

 東京都の労働相談情報センターやNPO法人労働相談センターに寄せられる相談では、「職場の嫌がらせ」や「いじめ関連」の相談が増えていると報告されている。これは、まさにパワーハラスメントそのものにほかならない。

 このような情勢を踏まえ、今年3月、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」により、定義と対策が公表された。「ウチに限ってない」「関係ない」という思い込みが、パワーハラスメントの顕在化を妨げている。防止するためには、パワーハラスメントの認識の共有、予防と対策に真剣に取り組むことが必要である。

Q9: そこで、都庁内において、パワーハラスメントをどのように捉え、未然防止や対策を行っているか、伺う。

A9:(総務局長答弁)

 一般的に、職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係等の職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させる行為とされている。

 近年、企業等では、厳しい経営環境の中で、職場内コミュニケーションの希薄化等の影響により、パワーハラスメントが顕在化しつつあるが、業務上の指導等との線引きが難しく、具体的な行為の認定やその後の対応に苦慮していると聞いている。

 都庁においては、現在、こうした企業等の事例研究や管理監督者への研修等を通じて、パワーハラスメントを未然に防ぐ意識啓発を行うなど、良好な職場環境の確保に取り組んでいる。

 今後とも、国の有識者会議の提言も参考としながら、職員一人ひとりが意欲と能力を遺憾なく発揮できる、風通しのよい職場風土づくりに一層努めていく。

Q10: また、都として、雇う側の企業や事業主に対して、パワーハラスメントについての認識や防止に、積極的な対応を行うべきと考えるが、見解を伺う。

A10:(産業労働局長答弁)

 いわゆるパワーハラスメントを含む「職場の嫌がらせ」は、労働者の尊厳や誇りを傷つけるばかりでなく職場環境の悪化を招くものである。

 このため、一義的には企業の経営者などが、その防止や対応を行うことが必要であり、都は、事業主等を対象に、ハラスメント防止に関するセミナーや、未然防止の取組の参考となる冊子等の作成・配布を通じて、普及啓発を実施してきた。

 国の有識者会議における提言では、パワーハラスメントの典型的な6つの行為類型を示しており、都としても、この提言も活用して、引き続き、普及啓発に取り組んでいく。

以上