都は「子どもの権利擁護委員会」存続を! 世界の流れに逆行するな!

執印真智子

 東京都は、 これまで5年間続けてきた 「子どもの権利擁護委員会」 を2004年度から廃止しようとしています。 当委員会は、 子どもへの虐待やいじめの深刻化にともない、第三者の相談・救済制度の必要性を「東京都児童福祉審議会(以下児福審)」が提言し、 98年から試行実施されてきたものです。 5年半で約6200件の電話相談を受け、 うち約200件のいじめ、 虐待などの困難事例について「子どもの権利擁護専門員」 が調査にあたってきました。
相談の8割は子ども自身からで、 東京の子どもたちが、この施策に救われてきたことは確かです。 生活者ネットは、 04年度にむけた予算要望でも、本格実施を求めてきました。ところが、03年度の1441万円に比べ120万円の予算削減が判明し、さらに、本格実施どころか「子どもの権利擁護委員会」をなくす考えであることがわかりました。
「子どもの権利擁護委員会」 は、 「子どもの権利擁護会議(困難事例に対応する 「権利擁護専門員」 3名と専門員をスーパーバイズする 「委員」 3名の合議体)」と電話相談員で構成されてきました。 都は120万円の削減でこの合議体をなくし、 児福審の下部機関である「権利擁護部会」に困難事例の対応を委ね、これで本格実施と説明しています。 しかし、 「子どもの権利擁護委員会」 の要綱が廃止されることとなり、 合議体と名称が消滅し、要綱で規定された 「子どもの権利擁護システム構築にむけた環境づくり」 「子どもの権利擁護のために必要と思われる場合、 都の子ども施策について知事および関係機関に提言することができる」 などの第三者機能も、 失われることになります。
児福審の答申でスタートしたしくみが、 児福審の検証もなく行政判断だけで改編されることも問題です。 さらに、 「国連・子どもの権利委員会」による、「子どもの権利条約実施状況・日本政府報告書への勧告」(1月30日・ジュネーブ)に照らしても、 子どもの権利救済の新しいしくみである子どものオンブズパーソン機能として 全国に影響を与えてきた 「子どもの権利擁護委員会」 を存続拡充することこそ急務です。 都がこうした勧告に無関心であることも大きな問題です。
東京・第一東京・第二東京の3弁護士会をはじめ、 各方面からも今回の東京都の方向に対し、 見直しを求める声があがっています。 生活者ネットワークは、 東京都が世界に対して恥ずかしくない判断をするよう、 各委員会の質疑を通して、 全力で働きかけていきます。