2015年第2定例会一般質問

2015年第2定例会一般質問

2015年6月17日

山内 玲子

 

  • 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会について

2020年東京大会については、世界一のオリンピックをめざし、国やスポーツ界も大会を盛り上げようとしてきましたが、ここへ来て、新国立競技場をめぐる完成時期や建設費などの問題により、収拾のつかない事態となっています。旧競技場を跡形もなく取り壊したタイミングでのドタバタ劇には、多くの都民から非難の声があがっています。知事は、開催都市としての責任を果たすため、国に対して、費用負担について情報公開を求めるとともに、負の遺産にしないためにも、計画の全面的見直しを求める必要があると考えます。

こうした中で、2020年東京大会を今の時代に合ったものにしようと、障がいのある人もない人も一緒に参加するなど、「多様性」をキーワードにした若い世代による大胆な提案も出されています。この際思い切って、多様な人がワクワクするような新たなオリンピックを構想してほしいと考えます。

東京は、さまざまな文化や価値観を持った都市であり、そこに多様な人が集まる東京大会は、多様性の尊重がどこまで実現できるか試される大会になると思いますが、知事の見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・Q1

A(知事)

2020年大会は、価値観が多様化した成熟都市東京での開催であって、相互理解、多様性の尊重などのオリンピズムを普及させることが重要である。

2020年大会は、「多様性と調和」を大会ビジョンの基本コンセプトの一つとしており、世界の人々がスポーツの力を通じて、人種、性別、性的指向、言語、宗教、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合う社会を育む大会を目指している。

私は、生活習慣・文化・価値観などにおいて、人間の多様性が尊重され、誰もが幸せを実感できる都市こそ、東京が目指すべき姿であると考えている。

2020年大会の成功を通じて、すべての人が生き生きと暮らすことのできる真の共生社会が実現できるよう、取り組んでいく。

 

2020年のオリンピック・パラリンピック大会は、環境配慮もうたっています。都は、長期ビジョンでエネルギー消費量を2020年までに2000年比20%削減、2030年までに30%削減の目標を掲げていますが、2020年東京大会は、その成果を示す機会となります。カーボンニュートラルの大会をめざして、各会場ごとのエネルギー消費量を捉え省エネ仕様にするとともに、再生可能エネルギーの飛躍的な導入にも取り組む必要があると考えますが、見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・・・Q2

A(オリンピック・パラリンピック準備局長)

立候補段階から「環境を優先する大会」という理念を掲げており、競技施設などの整備は環境に配慮。

都が整備する新規恒久施設は、省エネ・再エネ東京仕様を適用するほか、太陽光や太陽熱、自然の風など、多様な再生可能エネルギーを利用する設備をできる限り導入。

大会の開催に向けて、今後ともエネルギー使用の合理化を図り、環境負荷の低減に努める。

 

環境配慮の面からも地場や国産の木材利用を進めることは有効です。2020年東京大会の関連施設の整備において、多摩産材の利用を検討することが都の計画の中に位置づけられています。施設の設計が始まるにあたって、国産材もしくは多摩産材をどれくらい利用しようとしているのかうかがいます。・・・Q3

A(オリンピック・パラリンピック準備局長)

オリンピック・パラリンピックの施設整備における国産材等の活用については、我が国の森林資源の循環や日本の文化である木を活かした建築などを国内外の方々に発信する絶好の機会であると認識。

都は、長期ビジョンや森づくり推進プラン等に基づき、多摩産材の流通や利用拡大などに取り組んでいる。

都が整備する競技施設等については、こうした方針を踏まえつつ、施設の設計を進める中で、コストや耐久性なども考慮し、広く施設整備における木材の活用を検討。

 

  • 福祉・医療施設のエネルギー対策支援について

福島原発事故をきっかけに、省エネや再エネの普及は大きく進みました。特別養護老人ホームなどの福祉施設や医療施設は、電気だけでなくお湯をたくさん使うことから、熱を含めてエネルギーを効率的に利用することが重要です。熱と電気をあわせたマネジメントや太陽熱利用などを積極的に導入してほしいと考えていますが、新しく建設された施設でも、導入されていない実態がありました。こうした中小規模の施設では、省エネ・再エネ対策が検討項目に入っていなかったり、資金面や人材面がネックとなり手が回らないという声を聞きます。

このような課題に対し、都は、昨年度より中小医療・福祉施設向けに、創エネ・省エネ機器の導入を支援していますが、これまでの実績と今後の取り組みについてうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Q4

A(環境局長)

ESCO事業者を活用したコジェネレーションシステムなどの導入支援では、特別養護老人ホームや病院などから19件の申請があり、中にはエネルギー使用量を1割以上削減するような事例も。

小規模な施設に対しては、太陽熱システムの導入を支援しており、グループホームなどから3件の申請。

今後とも、補助制度の内容やエネルギー消費量の削減効果などを、業界団体などを通じて幅広く周知を図りながら、中小医療・福祉施設の創エネ・省エネを支援。

 

  • 未受診妊婦について

2011年、都は、周産期搬送コーディネーターが119番通報で搬送調整した事例を調査したところ、約4割もが未受診妊婦であることが明らかになりました。本来なら妊娠したとき、自治体窓口に届けを出しさえすれば、母子健康手帳や妊婦健診のための補助金交付や、妊娠、出産、育児等の相談を受けることができます。しかし、そうした情報にたどり着かず、妊婦健診を受けないまま出産に至るケースがあります。これが「未受診妊婦」「飛びこみ出産」といわれるものです。未受診妊婦は若年で望まない妊娠であることが多く、パートナーや家族の支援を受けられずに孤立し、経済的理由などのために未受診となっていることがわかりました。未受診で出産に至ることは、胎児にとっても母体にとってもリスクが大きいだけでなく、出産後の子育てにも影響が出やすく児童虐待に至るケースもあり、社会問題となっています。

妊婦健診を受けることの重要性を普及啓発するとともに、妊婦本人が孤立しないように、さまざまな不安や悩みを軽減し、適切な支援につなぐ相談支援の充実が必要であると考えます。舛添知事はフィンランドのネウボラを参考にして、妊娠、出産、子育ての切れ目のない支援のしくみをつくっていくとのことですが、そうしたしくみを構築するに当たっては、地域において悩みを抱える妊婦を適切な支援につなげるという視点も重要と考えます。

そこで、未受診妊婦対策として、普及啓発や相談支援の充実に都はどのように取組んでいるのか、うかがいます。・・Q5

A(福祉保健局長)

都はこれまで、区市町村や医師会等の関係団体との連携やインターネット広告の活用などにより、妊婦健診の重要性の啓発に努めてきた。

また、女性相談センターや女性のための健康ホットライン、昨年開設した妊娠相談ほっとライン等において、予期しない妊娠に関する相談のほか、経済面の悩みなど出産への不安を抱える方の相談に対応。

さらに今年度から開始するゆりかご・とうきょう事業では、区市町村において、出産等準備のために育児パッケージの配布を行い、専門職がすべての子育て家庭の状況を妊娠期から把握し、継続した支援を実施。

今後とも、こうした取り組みにより、妊娠・出産に悩みを抱える女性を、適切な支援につなげる。

 

調査結果では、未受診妊婦が出産した子どものうち4人に1人が低出生体重児で、4割がNICU・GCUへの入院が必要だったことも明らかになりました。このように医学的にも社会的にもハイリスクを抱える場合、地域の医療機関、福祉・保健・療育などの地域行政等による社会的・経済的支援や情報提供や心理的サポートなど、入院中からの支援が必要と考えます。

とりわけ、NICU等からの退院支援において、未受診妊婦への支援は重要と考えますが、都の取り組みについて、うかがいます。・・・・・・・・・・Q6

A(福祉保健局長)

都は、NICUやGCUに長期入院している子どもが在宅療養へ円滑に移行できるよう、周産期母子医療センターへのNICU入院児支援コーディネーターの配置を支援している。

このコーディネーターは、子どもが在宅に移行する際に、家族への医療的ケアの指導や相談・助言等を行っており、妊婦健康診査を受けずに出産した母親に対して、育児に関する知識等を提供するとともに、保健所など地域の関係機関にもつないでいる。

こうした支援方法や内容については、NICUスタッフの連絡会や研修会で紹介するなど情報の共有化を図り、周産期母子医療センター等における取り組みの充実に役立てている。

 

十代でしかも生徒が妊娠した場合、養護教諭等学校内で相談することも多いと聞いています。学校生活を続けられるかを含めた今後の生活の変化に対する不安や、どうしたら産み育てていくことができるかなどの相談に対する支援を充実するために、都立学校における実際の支援の内容、支援のための学校内外の連携など実態を把握し、生徒に寄り添った支援ができるようにすることが重要と考えます。

そこで、妊娠した生徒の相談体制と対応について、うかがいます。・・・Q7

A(教育長)

生徒からの不安や悩みなどに対応するため、担任、養護教諭やスクールカウンセラーをはじめ全教職員が生徒の健康観察などに努め、教育相談を行うとともに、学校外の相談機関を生徒に周知するなどして相談体制の充実を図っている。

生徒から妊娠の相談を受けた場合、本人の意向や状況を的確に把握し、不安や悩みに寄り添い、保護者と連携するなど、きめ細かな対応を行うとともに、生徒の健康を第一に考え、学校生活や授業等への参加について配慮を行っている。

今後とも都教育委員会は、各学校に対し、生徒一人一人の状況を踏まえ、生徒や保護者からの相談や要望等に適切に対応できるよう指導・助言していく。

 

  • 外国人にも正確な情報伝達をすすめるためのやさしい日本語について

都は、東日本大震災の経験を踏まえて、2012年4月に「災害時における外国人への情報提供」をまとめました。その中では、災害時の日本語は日常生活で見聞きしない専門用語や言い回しが多く、外国人にとってはわからないという声がありました。交通機関が止まり、駅のアナウンスが理解できず、不安に思い混乱しました。多くの外国人が必要とした情報は、地震情報や原発事故情報、水や食料がどこで買えるか、計画停電の予定など生活情報であり、報告書では、課題の整理を行い、効果的な情報提供に向けて提言しています。

この報告書の中にある「やさしい日本語」の取り組みについてうかがいます。・・・・・・・・・・・・・・・・Q8

A(生活文化局長)

2012年4月、「地域国際化浸水検討委員会」から、災害時における外国人への情報提供については、英語などの外国語対応に加えて、外国人でも理解可能なやさしい表現による日本語を取り入れることも有効であるとの提言があった。

これを受け、都としては、在住外国人向けに、東京都国際交流委員会のホームページを通じ、英語や中国語などと併せ、やさしい日本語でも緊急時の対応方法等を情報提供。

また、災害時に直接外国人支援を行う、防災語学ボランティアや区市町村、国際交流協会に対して、やさしい表現による日本語を活用した情報提供についての研修などを行っている。

 

やさしい日本語とは、小学校3、4年生程度の表現を使い、例えば、「避難」は「逃げる」、「給水車」は「水をくばる車」と表記するものです。来日1年の外国人を対象とした実験では9割が内容を正しく理解できたという報告もあります。東京都地域防災計画でも、多言語とともに「やさしい日本語」が位置付けられています。

オリンピック・パラリンピック開催を見すえ、「やさしい日本語」を生かしたマニュアルやガイドブックを作成し、例えば、コンビニや駅周辺、商店街などの関連機関、自治体等が統一して、東京に滞在する外国人に対し、防災、減災に関わるわかりやい情報提供を行い、適切な行動がとれるよう取り組みを進めていくべきと考えるが、見解をうかがいます。・・・・・・・・・・・Q9

A(総務局長)

大規模地震等の発生時に、外国人の安全・安心を確保していくことは重要。

これまでも、英語での防災情報提供や「やさしい日本語」による防災知識の普及啓発、外国人旅行者向け観光ガイドへの防災情報の掲載など発災時に備えた外国人支援策を進めている。

昨年末策定の「東京の防災プラン」において、災害情報の多言語化やわかりやすい案内板等整備など、2020年を目標に外国人等への情報提供手段を強化。

こうした取り組みを通じ、区市町村などとも連携し、発災時における外国人の安全・安心の確保に努めていく。