2015年第4回東京都議会定例会 一般質問

2015年第4回定例会一般質問

2015年12月9日

小松 久子

 

  • 若者の政治参加について

はじめに、若者の政治参加について伺います。このたびの公職選挙法改正による参政権の拡大は、女性参政権が保障された1945年以来じつに70年ぶりのことです。

2016年参院選は、高校生でも投票できる最初の選挙となり、これまで語られることのなかった「主権者教育」や「シティズンシップ教育」が注目されていますが、学校だけではなく、地域がともに取組むことによって、子ども自身も、地域の関わりを意識します。例えば、子どもも支払う消費税は国の政治が、地域の小中学校の問題は自治体の政治が決めていること。自分の日常生活と政治が深く結びついていることを知り、投票によってそれを変え得るということを学ぶ。このような取り組みは、子どもが参加型民主主義を理解し、実践するために必要な知識・スキル・価値観を身につけ、行動的な市民へと成長させていくものと考えます。

海外では政治におけるリテラシー教育が進んでおり、その事例を知事はよくご存知と思います。新たに約240万人の有権者が誕生するこの機会に、若者たちに東京都知事として政治参加を促すメッセージを発信することは、大きな意味があります。例えば、タウンミーティングや語る会などの手法で、若者と知事が直接対話するようなイベントなどの開催は、啓発活動に大きく貢献するのではないかと考えます。

公職選挙法が改正され、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられましたが、このことについて知事の所見を伺います。……Q1

A1(知事):今回の法改正は現行憲法において初めてで、70年ぶりとなる選挙権年齢の引下げ。将来を担う若い世代が、選挙を通じ社会に適切に参画していくことは、大いに意義のあること。今回の改正で、全国で240万人の若者が、新たに選挙権を持つ。そうした若者たちが政治や社会のあり方などに関心を持って、自ら学ぶことなどが期待される。一方、有権者として、正しく権利を行使するためには、公職選挙法上のルールなどを理解することが重要であるとともに、教育現場での主権者教育等も充実させていく必要がある。今後とも、広く都民に周知を図っていくなど、都選挙管理委員会において関係機関と連携しながら的確な対応を行う。

これまで、新成人となって最初の選挙では投票しても、2回目以降の選挙では投票に行かず棄権する若者が多い傾向にあります。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたこの機会に、若者世代の投票行動を引き出すための思い切った啓発活動が必要ではないかと考えますが、見解を伺います。……Q2

A2(選挙管理委員会事務局長):今般の法改正によって、新たに選挙権を得る対象が高校生を含む年齢層になる。現在、都選挙管理委員会においては、都内の高校などと連携して、選挙の制度や重要性への理解を図り、選挙への参加を促すため、選挙出前授業や模擬選挙などの取組みを進めている。今後とも、こうした取組みを始め、ホームページ・SNSなども活用しながら、若い世代に対する選挙に関する啓発に取組む。

  • 高齢者施策について

高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯が急増しています。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるには、居住の場の確保に加え、見守りを含む生活支援を一体的に考えていくことが求められます。都は、今年度から、こうした取り組みを行う区市町村を支援する「生活支援付すまい確保事業」を実施し、私の地元の杉並区がこの事業の第一号として取組んでいます。

生活支援付すまい確保事業を杉並区以外の区市町村にも広めるべきと考えますが、都の見解を伺います。……Q3

A3(福祉保健局長):都は、今年度から、住宅に困窮し、日常生活に不安のある低所得高齢者等に対し、住まいの確保と生活支援を一体的に提供する区市町村の取組みを支援する事業を開始。この事業を実施している杉並区では、地域の不動産関係団体や社会福祉協議会等と連携して、高齢者等を対象に、アパートの空き室のあっせんと入居後の安否確認等を併せて実施。今後、地域包括ケアの在り方検討会議での議論や杉並区の取組みも踏まえながら、住宅確保と生活支援を一体的に提供する取組みを推進。

都では、地域包括ケアシステムのあり方について議論が進められ、在宅での看取りの増えることが確実な状況です。そのような中、家族介護に係る問題に目を向けると、在宅で、高齢者をはじめ、障がい者や難病患者などの介護を担う家族への負担が大きく、介護疲れやストレスが原因で心中や殺人など、最悪の事態も起きています。在宅介護を担う家族へのいっそうの支援が必要と考えます。都の見解を伺います。……Q4

A4(福祉保健局長):高齢者等を在宅で介護する家族は、心身への負担感や、社会からの孤立を感じることが多いと言われている。介護保険法では、家族介護支援事業を地域の支援事業の一つに位置付けており、区市町村は家族介護者の負担軽減や孤立防止のための様々な取組みを実施。都は、区市町村の先駆的な取組み等を包括補助で支援しているほか、家族介護者のレスパイトに有効なショートステイや小規模多機能型居宅介護などのサービス基盤を整備。今後とも、こうした取組みを通じて、在宅で介護を行っている家族を支援。

先日の新聞に、介護殺人を犯してしまった家族介護者の半数が不眠状態にあったという記事が掲載され、専門家のコメントとして「介護保険制度は介護する側を支援する視点が欠けている」とありました。同感です。

介護者の中でも、特に10代から30代で祖父母や父母の介護を担うヤングケアラーの問題は深刻です。介護のために学業が続けられなくなり、就職できない、あるいは内定を返上し、離職せざるを得なくなり介護が終了した後も復職できない場合、容易に貧困に陥ります。結婚の機会ももてず、若いがゆえに地域とのつながりがなく生活経験の乏しさによる困難が多く生じ、新たな社会問題となっています。イギリスではこのような問題解決に早くから着手し、国も自治体も、さまざまな公的支援を行っています。家族介護を担うヤングケアラーについて、まずは実態を把握する必要があります。世田谷区では昨年、調査が行われていますが、都としてもこの問題に光を当て、支援策を講じるための実態調査を実施するよう要望いたします。

 

  • 障害者差別解消法施行に向けて

今日12月9日は、1975年のこの日に国連の障害者権利宣言が採択されてからちょうど40年目にあたります。2013年6月の障害者差別解消法成立を受け、翌年1月に日本が国連の障害者権利条約に批准したのは、条約に署名してから7年後のことでした。それまで保護されるべき対象とされてきた障がい者を「権利の主体」としてとらえるという、発想の転換を迫る障害者差別解消法が成立して初めて、批准が可能になったのだと言えます。法の理念である、障がい者と共生する社会にしていくには、すべての人の受容、知識、寛大さが必要であり、一般の人の意識が変わることが重要です。来年4月1日にいよいよ法が施行されます。そこで質問です。

都は、障がいのある人もない人も共に暮らせる社会の実現に向け、差別解消法が円滑に施行されるよう、準備を進める必要があると考えます。この取組み状況について伺います。……Q5

A5(福祉保健局長):都はこれまで、障がいのある人もない人も互いに尊重し支え合う社会の実現を目指し、障がい者施策を推進。法の施行に向けては、庁内の体制整備について検討を進めるとともに、障がい理解促進、法の周知等のための職員向け説明会を開催し、区市町村にも逐次情報提供を実施。今後、職員が適切に対応するための要領を作成するとともに、国の指針等を踏まえ、民間事業者等への普及啓発を行うなど、関係局とも連携し、障害者の方の意見も聴きながら必要な準備を着実に進める。

国では、対応指針を示している省庁がまだ一部にすぎない状況ですが、区市町村の現場では、あと4ヵ月を切った施行を前に、対応の準備に追われています。たとえば障がい児の就学相談で、選挙の投票所で、緊急時や災害時など、具体的な場面で、障がい者への合理的配慮の提供が行政に義務付けられることになるからです。しかし自治体により進捗にばらつきがあります。都は国の動きを待つのでなく、全庁をあげて積極的に取組み、ガイドラインなどを示す必要があります。

  • 電力自由化に向けて

現在パリで開かれているCOP21で、CO2削減に向けた枠組みづくりの議論が大詰めを迎えています。東京都でも環境基本計画の中間のまとめで、CO2を2030年までに30%程度削減する新たな目標をかかげ、再生可能エネルギーの導入拡大が示唆されました。

都民の多くは、電力の大消費地である東京が、電力供給の多くを都外の電源、特に原発に依存してきたことを、福島第一原発の事故によって改めて認識しています。原発に頼らず、気候変動対策にも資する再生可能エネルギーの導入を拡大していくことが重要です。

再生可能エネルギーの普及拡大に向けた都の取組について伺います。……Q6

A6(環境局長):都は電力の大消費地の責務として、一層の省エネ・節電とともに、再生可能エネルギーの普及拡大に取組むことが重要と認識。先般公表した中間のまとめ「東京都環境基本計画のあり方について」では、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた施策の方向性として、都市型の再生可能エネルギー等の利用促進など、東京の特性を踏まえた導入拡大や多面的なアプローチによる広域での導入拡大を必要としている。都は今後とも、「東京ソーラー屋根台帳」による情報発信や駐車場の上部等の未利用空間を活用した太陽光発電や、都市型バイオマス、太陽熱・地中熱の導入促進など、多面的な施策展開に努める。

2016年4月から電力の小売全面自由化が始まります。すべての家庭や事業所で電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになり、エネルギーシフト推進のチャンスと考えます。消費者が電源を選択するためには、電源構成や環境負荷の表示が必要です。

電力の小売り全面自由化を踏まえ、都民・事業者による再生可能エネルギー電力の選択を促すしくみづくりを進めるべきと考えますが、見解を伺います。……Q7

A7(環境局長):電力の小売全面自由化により、供給事業者の参入が活発化し、家庭などの需要家の選択肢が多様化する中で、低炭素な電力の供給拡大が重要。消費者が再生可能エネルギー電力を積極的に利用することで、再生可能エネルギーの供給拡大を促すため、都はこれまでも、キャップ・アンド・トレード制度における低炭素電力選択のしくみなど、需要側の取組みを推進。今後も、需要家・供給事業者の意向等を踏まえつつ、エネルギー環境計画書制度による情報発信や、消費者の選択意欲を喚起する普及啓発などを行い、電力小売全面自由化を契機とした、需要・供給両面からの再生可能エネルギーの普及拡大に努める。

来年1月から電気事業者の変更申し込みの事前受付ができるようになるため、事業者による消費者への勧誘が本格化していくと思われます。「何か契約をしないと電気が止まる」「電気不足や停電しやすくなる」と誤解している人もいるようです。「集合住宅の管理会社から系列会社への契約変更の案内が届いたが、どうしよう」などの声も寄せられています。

事業者間競争の激化とともに、今後は、契約に関するトラブルの発生が懸念されます。環境行政だけでなく、消費生活行政の視点からも電力の小売全面自由化に向けた取組が必要であると思います。所見を伺いまして、都議会生活者ネットワークの質問を終わります。……Q8

A8(生活文化局長):電力自由化により電力会社の選択が可能となるが、消費者が契約トラブルに巻き込まれる懸念。電力会社の選択方法や生活への影響等について、一月発行の都の消費生活情報やSNSなど多様な媒体を活用し、情報発信。都内の消費生活相談員を対象に、契約時のトラブル等に関する研修を今月実施し、相談機能を充実。消費生活行政の面からも電力自由化に備え、必要な対策を講じる。

以上